聖魔の想い人
「そろそろ朝食にしようか。遅くなってすまないね」

タリアは、ラファルがついて来るのを確認してから表通りに出た。表通りは、時間が時間なだけに、すでに多くの人々が働いたり買い物をしたりしている。タリアが言った朝食も、昼食と言った方が正しいかもしれない。

シンは、南部一の大きな街で、タリアが南部からルアンへ帰って来た時よく立ち寄る街だった。

もともと旅宿しかなかったのだが、カダとの交流が盛んになったことで次々と店ができ、人や物がやってきて、今のように賑やかになったのだ。

ラファルは物珍し気に規則正しく並ぶ店を眺めながら、後をついてくる。様々な色の衣が売られていたり、色んな種類の香辛料が売られていたり、美味しそうな饅頭が売られていたり、子供向けのおもちゃが売られていたり…

店の前で、子供が母親に、あれ買ってーとせがんでいる。タリアがちらっ、とラファルに目をやると、ラファルは意識的にか無意識にか、そちらを見ていなかった。

二人は道に出ている屋台で饅頭を買い、朝食替わりにした。ほかほかと湯気が立つ饅頭をラファルはしげしげと眺め、ぱくりと一口食べてみる。途端に、目が丸くなった。
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