【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~



「紅羽…?」


戸惑う來馬の声を聞きながら私は顔を上げられなかった


「ごめん…なさい…」


それでも絞り出した声は小さくてきっと皆には届いていない


こんなんじゃ、だめだ


だけど怖いんだ


こんな私を許してくれるか


いや…許されなくても良いんだ


それで2人の傷がほんの少しでも癒えれば


來馬から2.3歩離れて3人の注目が集まる中、中心へと足を進めた


とてもじゃないけど顔なんて見れない


だけど謝りたい


これは、私の弱さ。


「月希、夜斗…來馬も


みんな…っ、ごめんなさい 」


私はそこまで言うと言葉を切って深々と頭を下げた


「私が…っ自分勝手なことばっかりしたから、


優しさに甘えて、気持ち考えてあげられてなかったから、


みんなを傷つけた…。そして、沢山の人を巻き込んだ


謝って許されるなんて思ってないけど


許されることじゃないけど


それでも…っ


ごめん…なさい…っ」


ぎゅって掴まれたみたいに胸が痛い


凄まじい後悔に押し潰されそうになって


私の犯した罪だけが頭の中を回っていた



だけど沈黙の時間が訪れたのは一瞬だった


誰かが近づいてくる気配。


ここは地上じゃないから風も音もない


"無"の世界だから


そして、気配は私の目の前で止まった。


「…………っ」


それが、來馬なのか月希なのか夜斗なのはわかる


だけどこれから何を言われるのか私には想像できない


…もちろん罵声だって覚悟してる。



「紅羽、顔をあげて」


私の頭上から聞こえた声。


この声は…月希だ


私はフルフルと首を横に振った


そんなこと、できない。


同じ視線で同じ立場で話す資格


私にはないから


「紅羽?それじゃ私は何も言えない


何も言って欲しくないなら別だけど…


もし本当に悪いと思ってるなら顔をあげて。


私達とちゃんと目を見て話して」


昔よりもずっと凛とした月希の声


静かに目を開いた私はゆっくり、体制を戻した


改めて近くでちゃんとみる月希の顔。


ずっと大人になった顔立ちに決意の灯った目


迷いはない、そう言ってるみたいだった


昔…私達がバラバラになった頃はこんな良い顔してなかった


いつも何かに怯えるような目をさせたのは私だったんだ


そう思ったら真っ直ぐ目を見て話すことなんか出来なくて、目を逸らした


「紅羽…」


悲しそうな月希の声


私は人を悲しませることしか出来ない。


そんな時、沈黙を破った1つの声


「紅羽」


「…夜斗」


シリマナイト、冬詩が持っていた石の持ち主


多分私は彼を一番傷つけた


黒く澄んだ瞳に真っ直ぐ見つめられドキッとする


昔から顔立ちは整っていたけど


少し大人になった夜斗は、かなりかっこよくなっていた


月希の横に並んだ夜斗


その目に迷いは感じられない


夜斗はきっと自分の居場所を見つけたんだね


「紅羽、俺は紅羽がずっと好きだった」


「え…?」


夜斗から発せられた衝撃の真実


夜斗が、私を…?


でも月希は夜斗が好きで…


まさか
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