【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~

空の上の白の世界


ー空の上の白の世界ー


「そっか。じゃあお互い頑張らなきゃね」


「はい、辛くなったら空を見て私を思い出して下さい


私はいつでも紅愛さんを見守っていますから」


「ありがとう。


…じゃあね、紅羽」


「はい。


…色々ありがとね、紅愛」



強い誓いと決心を持って前を歩いていく彼女


その背中はいつの間にか大きくて、もうあの頃の何にも戸惑っている幼い子供じゃない



彼女が何メートルか進むと次第に白いモヤがかかり始めて……


消えた。


きっと彼女を必要としてくれる人の所へ帰れたはず





だけど…


あんなにも優しい彼女を見放す訳は無いと知っていてもやっぱり心配で。こうして此処から彼女の様子を見ている


何故そんなにも肩を持つのか、そう言われれば


私達の身勝手な行いの末できた呪いの最後の被害者達の1人


そして、この争いを終わらせてくれた恩人だから


そうなのだけど、私の本音はきっと、彼女の優しさに惹かれたんだと思う


どこが?とは言うまでもないかな。


私には無かった人を見る力と優しさを持っていたから


彼女には不幸だった分、これから沢山幸せが訪れて欲しいと思う…。














「帰ってきなよ、2人とも」

「待ちくたびれたぜーほら早く帰ろうぜ俺達の場所に」

「行くか」

「うん、」

「紅愛、好きだ」

「私も。私も好きだよ、翔聖っ」



それから少し経って、彼女は本当の幸福を手にいれた


「はぁーー…良かった…」


沢山心配をしていた訳ではないけどなんとなくホッとして肩の荷が降りた気がする


…次は私の番だ


頬をパチンと叩いて気合を入れる


私は空からずっと紅愛を見てきた


だから、彼女の成長を通して沢山のものを学んだんだ


在るべき姿、心…仲間


きっと、大丈夫だよね?


紅愛はもう私を見る事はできないけど、どうか見守ってて



ぎゅっと拳を握り締め目をつぶった


その瞬間、ふわっとした感覚が全身を包み込み体が浮いた気がした











トン…と足がゆっくり地面に着く感じがして目を開く


「………………っ!」


そして、目の前に映ったものを見て私は目を見開いた


「來馬…月希…夜斗…っ」


微笑みながら私を見ていたのは、私が会いたかった3人で。


どこか大人っぽくなっていたその姿を見て視界が歪む


時間を正確に数えたら私達はもうとっくに死んでいるはずで


時が流れても変わらない筈なのに…この世は不思議な事ばかりだ




「紅羽」


だけど私の大好きだったその笑顔で


腕を広げられては私はその胸に飛び込まずにいられない


笑顔もちょっとだけ大人っぽくなっててカッコ良さが増してる


「來馬…」



駆け出してぎゅーと抱き着けば昔と変わらない匂いと感触


ああ、私はこの安心する腕と何もかも包んでくれるような空間が大好きだったんだ


あまりの心地良さに目を瞑った



だけど




「…4人が死んだあの場所は呪われてなんかいなかった


呪いを作ったのは…私達だったんです


いや、私のせいなんです…っ





私が夜斗の事も月希の事も考えずに自分の事ばかり考えていたから!!


私が悪いのっ!!!」



ふと、そんな声が聞こえた


…それは紛れもない私の声


自分の愚かさを恨み、後悔した自分の叫び



私はまた、同じ事を繰り返そうとしている


スッーと心が冷えていくのがわかって、トンと來馬の胸を押した



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