見つめられない
完璧なる私のミスだ。
浮かれてて気づかない…情けない。

「…悩んでも仕方ない。」

切り換えきりかえ…合言葉のようにぶつぶつ呟く。


「…でさ。」

ん?廊下で話し声?

誰だろうと思ったら

「…」

青木さんと柏木先輩。

つい、廊下の角のところで隠れてしまった。

「…中村はやっぱりまだ痴漢のショック引きずってんのかな?」

「…どうだろう。でも男の俺らにはわかんないからな。」

この感じ。前も…

「ミスだったけど、やっぱり注意しづらいって思っちゃうんだわ。

ヘコんでるだろうし。」



柏木先輩の言葉に前の記憶が甦ってしまった。

『あのミスはいけないな。背中丸めて歩いても小さくは見えないのに』

嫌だ、聞きたくない!

青木さんが次の言葉を喋る前に勝手に脚が動いてた。

とにかく走ってた。

入ったトイレの個室で泣いてしまった。


軽蔑された。

もうあの冷めた目で見てほしくない。
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