白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


言いながら、ジワリと涙が浮かんできた。


こんなに近くにいるのに、気持ちさえも伝えられなくて、ぎこちなさも抜けない。


過去を忘れて新たに恋をスタートさせようと思ったのに、どうしても過去が邪魔をする。


何も怖がらずに、好きだと素直に言えたらいいのに。


他の女子のように、簡単に柊の周りにいることが出来たらな。


「……ック」


突然、柊が苦しそうに息を詰まらせた。


驚いて見ていると、何と、彼の頬に、ツーっと涙が伝ったんだ。


右目からツーっと落ちて、今度は左目からも落ちる。


「……柊?」


頭が痛いのかと思ってさっきよりも大きめに名前を呼ぶけど、彼は目を開けない。


……怖い夢でも見てる?


あたしは、そっと柊に手を伸ばし布団の上からトントンと優しく撫でた。




< 104 / 297 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop