白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
通学路のこの道は、町のメインの道路だと言うのに、交通量が少ない。
ひっきりなしに車でも通れば、バスや大型トラックの騒音で気が紛れるのに。
どうしてこんなにも田舎なんだ。
聞こえるのは、他の生徒の笑い声と、道路の両側の畑に植えてある作物の葉が風に揺れる音。
歩きながら何度も出てしまうため息は、きっと3人に聞こえているはずだ。
そのまま無言で歩き続けたあたし達は、あの木の側までやってきた。
桜の枝が春の風に揺れ、サァーっと鳴いている。
むき出しになった根っこと斜めになった幹で美しい木とはいえないけど、この木を見る度に、何だか心が浄化されてるような気がするんだ。
今も、このぎこちない空気に疲れが溜まっていたのに、それがスーッと軽くなったような気がした。
桜の花が、あっちにヒラヒラ。こっちにヒラヒラ。
風が吹く度に、クルクルと空中で踊っている。
木の側に立っているバス停の屋根は、散った桜の花びらでピンク色になっていた。