LOVEPAIN

「久しぶりねぇ。

広子ちゃん達、何も言わずに引っ越したから」


その女性は私のそんな気持ちを無視するように、

ゆっくりとこちらに
歩み寄ってくる



私達が何も言わずに引っ越ししても、

きっと近所の誰かから噂で私達が引っ越した理由を、
彼女は聞いているだろう



あの家は、働き者の母親が居なくなったから、

残ったどうしようもない父親だけではこのマンションの家賃は払えないから、
安いアパートにでも
引っ越したんじゃないかって




「今日、旦那が有給取って休みだったから、

少し遠くの大きなスーパーに行こうと思って。

そしたら、広子ちゃんに会えて。
本当に良かった」


そう笑いかけられて、
なんとか愛想笑いを返した




「それにしても、広子ちゃんすっかり大きくなって。
私達にとっても広子ちゃんは娘みたいなものだったからねぇ。

昔はよく広子ちゃんおばちゃん家に遊びに来てたのよ?

だけど、大きくなってきたらやっぱり友達がいいのか遊びに来てくれなくなったから、

寂しかったのよ」


そう言って、

その女性は私の肩に
そっと触れた
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