最悪から最愛へ
「ま、俺も男なんでねー。それなりにそこは気になるんだよね」


「ちょっと!セクハラですよ」


渚の頬はさらに赤さを増す。それに対して、峻はますます楽しそうだ。


「今はプライベートなんだから、固いこと言うなよ」


セクハラ店長というよりも、少しチャラくて、エロい男になっている。そんな峻に渚が冷静になれるわけがない。


「私、帰ります!まだ掃除が途中なんでした」


やっと帰ることを思い出した渚は、立ち上がる。


「待てよ」


「嫌です。離して…」


理想の手が渚の手首を掴む。でも、もうその手には惑わされない。


「何で勝手に帰るんだよ。帰りはちゃんと送るから」


「送ってくれなくていいです。一人で帰れるから…」


立つ渚に合わせて、峻も立っていた。周りの客が二人を注目している。カップルの痴話喧嘩に見える二人だ。


渚は、峻の手を離そうと反対の手で指に触れる。峻は、その瞬間を逃さなかった。渚が触れた瞬間、素早く手首を離して、渚の手に自分の手を絡ませた。
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