最悪から最愛へ
「分かったよ。そんなにも帰りたいなら、帰れよ。でも、その前に…」


「えっ?キャッ…ん!」


峻が手を緩めた瞬間、解放された思った渚は油断してしまった。緩められたけど、まだ完全に離してはいなかったから、再び引き寄せられて、唇を奪われることになる。

素晴らしいくらいに、素早い動きだった。文句の多い渚を早く黙らせたかった。


「んー、ん!ん…」


くっ付いたら、簡単には離れない。渚は、離れようと頭を動かすけど、素早い動きの峻は渚の後頭部までいつの間にか、しっかりと掴んでいた。


「はあ…。はあ、はあ」


やっと離れた時には、渚は疲れていた。キスだけで疲れるなんて…。その先に行ってしまったら、きっとへとへとになる。

渚は、我に返ったように首を何度も横に振る。嫌悪感を抱いた相手に対して、有り得ないことを思考回路をしてしまった自分を悔やむしかない。

悔やんでも悔やみきれない気持ちはあるが。
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