最悪から最愛へ
「紺野さんさー、彼氏いないでしょ?だったら、ご飯くらい何の問題もないよね?休みが分からないのだったら、今すぐシフトを見て来なよ。俺、10分後にまた来るから。…あ、そうそう。これ、俺の名刺ね。ここにメアドあるから登録しておいてね」


渚の返事を聞かないで、勝手に彼氏がいないと決めつけて、お菓子売場の方へ行ってしまった。渚の手には欲しくもない迷惑な名刺が残されていた。


「山口高志…」


知りたくもない名前を知る羽目になる。

その時…


「チーフ。もしかして、あのお客さんですか?」


戻ってきた田中くんは、名刺の受け渡しをしているところをちょうど見ていた。


「うん。私の休みを教えろって、言うのよ。どうしよう」


「珍しく弱気ですね。チーフらしくないですよ。でも、俺がここにずっといますから」


チーフという立場上、いつもの渚は強気である。
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