【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
「今日は特別に俺が漕いでやるよ!」

「それはどうも」


数十分後に現れた桜夜くんは自転車に跨りながらやけに上機嫌な様子だった。

こんな時間に中学生が二人乗りでうろつくなんて、警察に見つかったらシャレにならない。

私ってば桜夜くんとつるむようになってから、深刻な不良化が進んでるよね。

こんな時間に出歩くのなんていつぶりだろう。

背徳感を感じつつも、二人乗りの自転車は人通りの無い真夜中の路地を走る。

なんとなくそんな気はしていたけど、方角からしてやはり学校に向かっているらしい。

まさか忘れ物を取りに行くから付き合えってこと?でも今の時間じゃ校舎の鍵開いてないじゃん。

学校で寝泊まりしてる公務員のおじさんと仲良いとか?はたまたピッキングの技術を見につけているとか。

……桜夜くんなら有り得ないこともない。

そんな考察をしている最中も、桜夜くんを後ろに乗せた私が何度も死に物狂いになった坂を難なく上っていく桜夜くん。

不気味なトンネル内では、良からぬものを見てしまわぬよう顔を俯けて目を瞑っておいた。
< 38 / 67 >

この作品をシェア

pagetop