初恋の証 (BL
初恋の証
――♪~♪
「メール?こんな時間に誰から――」
[宮田健人]
携帯の液晶画面に表示されたのは、
今でも目にすると心臓が跳ねてしまう彼の名前だった。
彼とは、卒業してから一度も二人きりで会ったことはない。
同窓会や元チームメイト達との飲み会は数え切れない程行われてきたから必然的に彼とも顔を合わせることはあったが、
俺と彼は他愛無い会話を交わすだけでお互いの細かな近況などは特に話すことはなかった。
時が流れたのだ。
あの高校を出てから、もう何年も経った。
みんな成人し、就職した。
俺も社会の歯車の些細な一部として毎日平凡に過ごしている。昨日も、今日も、明日も、同じような日々を繰り返す。
どこにでもあるような普通の日々。
どこにでもいるような、普通の大人。
だから、きっといつかこんな日が来ることを俺は心のどこかで覚悟していた。
彼の口から“その言葉”を聞く日が来ることを俺はとっくにわかっていた。
そう、もうみんなあの頃の少年ではない。
俺も、そして彼も、
もう 大人になってしまったのだ――……。
大丈夫。
俺は、笑って言葉を返せる。
彼のために精一杯の強がりを見せられる。
【初恋の証】
君に惹かれたことに、理由もきっかけもなかった。
いつのまにかその姿を目で追うのが癖になっていて、
いつのまにかその笑顔を見るのがたまらなく嬉しく感じていた。
――友情の域を超えた想い。
同性相手にそんなものを抱いてしまった自分に最初は焦りや恐怖を覚えた。
しかし、
自身の常識や理性を嘲笑うかのように心は君に翻弄され続けた。
君を見つめるだけで鼓動は高鳴り、
君に触れられるだけで体が熱を帯びていく。
そこまでいったら、もう認めざるを得なかった。
自分は恋に落ちてしまったのだと。
そしてそれはとても困難で、報われる可能性は皆無に等しいということ。
片思いの可愛らしい疼きを楽しむ猶予もなかった。
少女や少年が異性に恋をすると感じるような、あの甘い痺れ。
その甘さに酔いしれて、片思いというものを楽しむ。
それが一般的な少年少女の片思い・恋というものだろう。
だけど、自分のものは一般的なそれとはかけ離れたもので。
楽しむなんてとてもじゃないけれどできない。
毎日、毎日、ただただ切ないだけで……。
――恋をした相手は、自分と同じ男――
その変えることのできない冷たい現実の前に、オレは3年間跪き続けていた。
初恋だった。
あれは、オレの初めての恋だった。
切なくて苦しいだけの、初恋……。
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