恋のはじまりは曖昧で
「はいはい。押すからちゃんと掴まってなよ」
「うん」
ブランコに乗っている虎太郎の背中を押す。
「キャハハ、おもしろい。さあやちゃん、もっとおしてー」
「いくよ。それっ」
「すごーい」
さっきから何度これを繰り返したか分からない。
いつになったらこのブランコ押し地獄から解放されるんだろう。
「ねぇ、コタ……まだ?」
「うん、もうすこし」
その答えを聞いて天を仰いだ。
最初は本気で押していたけど、いい加減疲れてきたのでおざなりな感じで押していた。
「もういいよ。こんどはすべりだいする!」
そう言って虎太郎はブランコを降りて滑り台に向かって走り出した。
とりあえず助かった、と小さく息をはいた。
虎太郎は滑り台を階段を上がっては滑るを繰り返している。
その滑り台も飽きた頃。
「あー、たのしかった。ボク、のどかわいた」
「じゃあ、自動販売機でお茶を買おう」
「えー、ジュースがいい。ボク、りんごジュース」
「はいはい、分かったよ。その前に手を洗おう」
自動販売機に向かう前に、水道のところで手を洗わせる。
洗い終わるとハンドタオルを差し出した。
「ホラ、洗えたらこれで手を拭いて」
「はーい」
拭けと言ってもパパッと適当に拭くだけで、実際はまだ濡れてるという。
いちいち気にしてたら、こっちの身が持たないので細かいことは気にしないでおこう。