恋のはじまりは曖昧で
海斗と話をして、田中主任本人の言葉が聞きたいと思った。
ひとり相撲して勝手にモヤモヤして気にしていたら、田中主任に失礼だよね。
町村さんに“信じてる”と言ったくせに田中主任のことを信じていないことになってしまう。
連絡しようかと思ったけど田中主任は出張だからと躊躇した。
ため息をつきながら、おにぎりを口に運ぶ。
晩ご飯を食べ終え時計を見ると、二十時を回っている。
はぁ、と何度目か分からないため息が出た。
何をするでもなくボーっとしていて、気がつくと三十分が経っていた。
ずっとこんなことをしていたら時間がもったいないと思い、さっさとお風呂に入ることにした。
お風呂から出て、何気なくスマホを見ると着信があった。
田中主任からだ。
今から五分ぐらい前にかけてくれている。
かけ直したら出てくれるかな。
すぐに折り返し電話すると、数回のコールの後、留守電になった。
どうしよう、メッセージを残そうか迷っていたら田中主任の声が聞こえた。
『もしもし、ごめん。車を路肩にとめてたから出るの遅くなった』
「あの、高瀬です。お疲れさまです。私の方こそ、電話に出れなくてすみません」
『お疲れさま、って今は仕事中じゃないけどな』
クスクス笑いながら言う。