恋のはじまりは曖昧で
「俺は紗彩と付き合えている今がすごく幸せなんだ」
不意にそんなことを言いながら私を愛おしそうに見つめ、コツンと額を合わせてきた。
すごく照れくさいし、距離の近さにドキドキする。
「私も、です」
大好きな人と付き合えることがこんなに幸せなことだとは思わなかった。
この幸せな時間がずっと続けばいいのに。
「あー、もう!こんな可愛い表情をするなんて反則だろ。食べてしまいたい」
「えっ?」
言葉の意味を理解する前に、唇が重なっていた。
「んっ……」
鼻にかかったような声が出る。
何度か啄むようなキスを繰り返し、それが次第に深くなっていく。
濃厚な口づけに甘くて蕩けてしまいそうだ。
だけど、キスの時の息継ぎが上手く出来なくて。
酸素を求めて口を開くと、それを待っていたかのように田中主任の舌が口内に入り込み、私の舌を絡め取る。
貪るようなキスで、まさに食べられているみたい。
段々、息苦しくなり思考がぼんやりとしてきた。
最後の抵抗とばかりに田中主任の胸を押して訴えると、それに気づいてくれたのか、ゆっくりと唇が離れる。
はぁはぁ、と息を整えている私を見て田中主任が一言。
「ホント可愛いな。キスだけでこんなに蕩けた顔をして」
抱き上げられて後ろのベッドに仰向けに寝かされると、田中主任が覆いかぶさってきた。
私を見つめる目が熱っぽい。