恋のはじまりは曖昧で
年上の人に人気というのは、分かる気がする。

「っていうか、御三家とは親しくなった?」

薫が興味津々に聞いてきた。
次から次へと話題が飛ぶ。

「なれる訳ないでしょ!私ら今、仕事覚えるのだけで大変だって話をしたばっかりなのにそんな余裕どこにあるのよ。失敗しないようにって毎日が緊張の連続なんだから」

「それはそうだけど。でもやっぱり、社内で噂の御三家のことは気になるんだよね。私としては紗彩のコネを使って御三家と一度は話をしてみたい訳よ」

コネって……なんだそりゃ。
そんなの無理に決まってるでしょ。
鼻息荒く言う薫にため息しか出ない。

うちの部署の原田部長に河野課長、田中主任は周りから“イケメン御三家”と呼ばれていると薫から聞いた。
ちなみに原田部長は既婚者で河野課長は今年の夏に結婚する予定で、田中主任だけが独身だ。

三人とも、ただ格好いいだけじゃなく仕事もデキるので噂されるのも頷ける。
だからって話をしてみたいとか思うものなんだろうか?

「そういうものなのかな」

「そういうものなの!そりゃ、紗彩はいいわよ。同じ部署だから仕事柄話が出来るでしょ。他部署の私なんて接点すらないんだから」

「言われてみればそうだけど」

「でしょ!それに営業は若い男性社員が多いから羨まし過ぎる。総務なんて既婚者ばかりで平均年齢高いんだよ」

「羨ましいって薫、彼氏いるじゃん」

ホント、何を言ってるんだか。
いつも惚気を聞かされるこっちの身にもなって欲しい。
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