恋のはじまりは曖昧で

「弥生、紗彩!悪いけど手加減しないからね」

卓球台の置いてある場所に行くと、すでに臨戦態勢だった三浦さんが持っていたラケットをビシッと私たちに向けてくる。
私はお遊び感覚でやるんだろうと思っていたから、三浦さんの真剣モードにビビリ気味だ。

「こっちだって本気でやりますからね」

西野さんが口で応戦する。

「じゃ、いくよ」

井口さんのサーブで試合が始まった。

「あっ、ズルしないでよ」

「してませんよー」

何だかんだと白熱した打ち合いになり、結局三戦して2-1で私たちのチームが勝った。

「やっぱり若さには勝てないわ」

三浦さんが疲れた、と言いながらタオルで汗を拭いた。

「いやいや、三浦さんのあのスマッシュはかなりのものでしたよ。だって打ち返せなかったですもん。ねぇ、紗彩ちゃん」

「はい。あのスピードでこられたら打ち返すのは無理です。私、怖くて目を閉じちゃいましたよ」

正直、三浦さんのスマッシュは本気過ぎて怖いぐらいだった。
『うりゃぁ』なんて声を出すから、それにビックリしたって言うのもあるけど。

久しぶりに動いて汗をかいた。
日頃、全く運動する機会がなかったから余計に疲れる。
三浦さんにつられて、かなり本気でやったから腕が筋肉痛になりそうだ。
明日が怖い。
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