恋のはじまりは曖昧で
ビンゴゲームも後半に差し掛かり、景品が残り少なくなってきた。
最初のうちは数字が発表されるたびに一喜一憂していた。
だけど、私のカードに書いてある数字は呼ばれる気配がまったくない。
まだ二ヶ所しか開いてないのに、他の人はビンゴが続出している。
浅村くんは早々にビンゴ達成し、コーヒーメーカーをゲットしていた。
「弥生さん、私ちょっとお手洗いに行ってきます」
「了解。じゃあ、紗彩ちゃんのビンゴカードも一緒にみとくね」
「ありがとうございます。でも、きっとこの調子なら全然開かない気もするんですけどね」
ガヤガヤと盛り上がっている宴会場を出てトイレへ向かった。
用を足して鏡で自分の顔を見る。
お酒を飲んで真っ赤に染まった顔。
スッピンだから、やたら毛穴が目立つんだよなぁ。
あー、こんなことなら日頃から鼻パックとかしておけばよかった。
今さら言っても仕方ないことだけど。
トイレから出て、ふとお土産が気になった。
宴会場へ戻る前にお土産売り場へ行ってみようと思っていたら「ちょっと」という声が耳に届き足を止めた。
今のは私に対して言ったのかな?
トイレから宴会場までの通路には私以外に人の気配はない。
声の主は壁にもたれてこちらを見ていた。
確かこの人は弥生さんが教えてくれた、経理の森川さんだ。