seasons.(シーズンズ)【完】
「昨日偶然片桐くんに会ったの。本当に偶然。その時初めてまともに顔を合わせた」


あっくんは私の話を黙って聞いている。


「ほなみって呼ばれた。覚えてる?あっくんも私のことほなみって呼んだことあるよね?」

「……はい」


短いけれどやっと返事が返ってきた。

その意味ありげに置かれた沈黙の意味を私は知りたい。


「ほなみって誰なの?」

「…………」


あっくんは私に真実を告げるのを躊躇っている様子だった。

それは良からぬ理由があるという前兆にも見える。


「すいません。涼人には僕から言っておきます。冬香には危害を加えないでください、と」

「そんなことお願いしてるんじゃないよ」

「不快な思いをさせてしまったのであれば謝ります。本当にすいません」

「どうして謝るの?私はそんなこと望んでない。ただ真実を教えてほしいだけで――」


言い掛けたところでバン!と机に手をつく音が耳に入ってきた。

一拍遅れでパイプ椅子が倒れる音も。

驚いた他の受講生達は、石化したように固まっている。

もちろん私も何が起こったのか理解できなかった。
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