君と夢見るエクスプレス

彼のお仕置き、彼の仕返し……
良からぬ想像とともに、恐怖がこみ上げてくる。



走り出した電車が、速度を上げながらホームを離れていく。電車の巻き起こした風が、彼の短い髪をひらひらと揺らしている。



ゆっくりと、彼が手を引いて歩き出す。



「離してください!」



思いきり強く、手を振りほどいた。
彼の好きにさせてたまるものか。



彼が振り返り、呆気にとられた顔をしている。



「何?」



おまけに、しれっと首を傾げる。



今更しらばっくれても無駄。
これから何をしようと思っているのか、私にはわかっているんだから。



「何って……、とぼけないでください、どこに連れていくつもりですか?」
「どこ? ご飯食べに行こうと思ったんだけど?」



彼は口を尖らせて、澄ましてる。
悪意のカケラも感じさせない顔をして。



「はあ? ご飯? って……」
「うん、お腹空いたし、松浦さんと話してみたかったから」



ほら来た!
やっぱり追及するつもりだったんだ。ご飯につられて、ついて行ったりしたら終わりだ。



私は息を吸い込んだ。



「話って何ですか? 話があるなら、ここで聞かせてください」



きっぱりと言い切った。
舐められてたまるものかと。



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