君と夢見るエクスプレス

彼に連れられるまま、再び駅に向かって歩いてく。また電車に乗るつもりだろうかと思い始めた頃、彼が振り向いた。



「駅前に、お好み焼き屋があるの知ってる? 立ち飲み屋の裏なんだけど」
「知らない、あまり行かないから」



ここには学生の頃から約七年住んでるけど、さほど詳しくない。通学と通勤の途中で立ち寄る店は、駅前のカフェ、スーパー、コンビニ、パン屋さんなど決まってる。



元々散策するのは好きじゃないから、店を探して回ったりすることはほとんどない。



飲みに行くのは専ら、友人や職場関係の人と一緒に他の駅周辺。滝野原は小さな駅だから、他の駅前の方が店の種類も数も多い。



「そこでいい? 他に食べたいものある?」



お好み焼きは嫌いじゃないけど、小汚い店だったら嫌かも。だって、立ち飲み屋の裏にあるという時点で怪しい。



だけど、他にと言われても思いつかない。今から電車に乗って出かけるのも面倒だ。



「うん、そこでいい」



どうでもいいや、と投げやりに答えた。



もし小汚い店だったら、食べ終えたら早々に出て行ってやるんだから。とくに話なんてすることないのだから。





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