君と夢見るエクスプレス
9. どうしようもなく輝いてる
彼から電話があったのは、土曜日の午後だった。
ちょうど私は家に居て昼ごはんを食べ終えて、掃除をしていたところ。掃除が終わったら、明日着ていく服を選ぼうと思っていたタイミング。
スマホの着信表示に映る彼の名前を見て、胸が弾んでしまう感覚が新鮮で心地よい。
こんな気持ち、何年ぶりだろう。
きっと明日の段取りのことだと疑わなかったのに、彼の第一声はいつもより沈んでいた。
「ごめん、明日行けなくなったんだ」
あんなにも弾んでいた胸が締め付けられて、言葉が出てこない。
まったく予想しなかった彼の言葉に、私は対応する術を持ち合わせていなかったから。
「駅の先輩が体調を崩して休むから、代わりに出勤することになったんだ」
言い含めるような彼の声は、頭の上辺を素通りして消えていく。私を気遣ってくれていることは十分わかるけど、どうしても答えが浮かばない。
「陽香里? 聴こえてる?」
名前を呼ばれて、ようやく気づいた。
早く、何か答えなきゃ。
必死で言葉を探し始める。