君と夢見るエクスプレス

このまま黙っていたら、私がショックを受けてると思われてしまう。彼よりも私の方が楽しみにしてたと思われるなんて、絶対に嫌だ。



私はデートなんて、どっちでもよかったんだから。彼が行こうと言ったから、私は応じただけ。



「聴こえてるよ。仕方ないね、仕事頑張って、また今度ね」



さらっと答えた。
できるだけ感情を込めずに、そっと突き放すように。



それでも、できるだけ怒っていると感じさせないように心がけたつもり。
そうじゃないと、私のプライドが許さない。



「待って、今晩行ってもいい?」



彼が、慌てた口調で縋ってくる。



少しキツい言い方をしてしまったかな?
私は少しも怒っていないし、楽しみにしてもいなかった。
言い聞かせつつ、



「ごめん、今夜は出かける予定があるんだ」



と、口調を和らげた。



「何時に帰る? 仕事の帰りに寄るから」
「遅くなると思う、大学の友人と食事に行くの。またね」
「わかった、友達って女の子?」
「うん、そうだよ」



なんて、嘘ばかり。
予定なんて、本当は何にもない。




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