間違いからはじまる


都築は同期の中でも一番の出世頭だと言われている。なんてったってすでに課長職だ。



そして無駄に顔がイイし頭も切れるもんだから、社内の女性の眼差しを一心に受け憧れの課長像を演出し続けている。



私はといえば、都築に対して恋愛感情は持ち合わせていない。確かに顔はいいが惹かれる程にときめかないし、それに奴に関わったら平穏な日常じゃいられなくなるだろう。



ま、実際は関わってしまったのだけれど…。



でもこれっきりだ。今後二度と関わるつもりはない。一夜だけの過ちならば蚊に刺されたようなもの。



お互い大人なんだから割り切った関係で済まされるはず。だからこれ以上、昨日の事を掘り返さず平穏に過ごそうと決めた。



いつもより仕事をスピードアップさせ、定時で会社を出た私は真っ直ぐ自宅へ帰って来た。



だが、1人でいると思い出すのは昨日の事ばかり。居酒屋を出る前から既に記憶が曖昧でいくら考えても思い出せない。



今朝飛び出した部屋は都築の部屋なのだろうか。私の給料では到底入居出来ないような高層マンションだった。



気がつくと悶々とアイツの事ばかり考えてしまってるのが癪でお風呂に入ろうと脱いだ体を鏡で見て私は硬直してしまった。

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