アイツ限定
「そうか…今日の稽古やめとくか?」
「いや…やる。」
「そうか…じゃ着替えていつものとこ来いよ。」
「わかった。」
あたしの返事を聞いて、優兄は、優しく微笑んでから、あたしの部屋を出て行った。
雅人と会ってから、こういう夢ばっかり。
もう…忘れたはずなのに。
そして、なぜだか、村上があたしにちょっかいかけてくることはあれ以来なくなった。
こちらにしてはありがたいんだけど。
あとは、席さえ離れてくれれば…
そんなことを考えながらあたしは道着に着替える。
帯をきっちりと腰のあたりで占めながら、あたしは自分の部屋を出て、地下1階にある武道場へと向かう。
ここは、祖父が道場を開いていた時に使っていた道場。
今は松木兄弟の稽古場となっている。
長男の松木啓一(マツキ ケイイチ)と、次男の松木優(マツキ ユウ)は柔道、空手を完全にマスターしている。
だからあたしはあの、忘れたくても忘れられない、あの日を境にこの2人から自分の身は自分で守るため、武道を習っている。
ようは、護身術。