極道一家のマヤ
杏奈の言う通り、適当なテーブルへと席につく私たち。
緊張しながらも、ふたりで軽い雑談をしていたときだった。
―カラララン
「いらっしゃいませ」
誰かが店の中に入ってくる。
同時に…
―コツ、コツ、コツ…
とこちらに向かってくる足音。
え…
賑やかだったはずの店内が……急に静まり返る。
「お、おい、あれって…」
「一条龍さんじゃ…」
靴の音は…私の席のすぐ横でピタリと止まった。
微かに視界に映る、黒い革靴…。