恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「ダメ」


我知らず、私は呟いていた。


「ダメ、私の前からいなくなるなんて、ダメ。そんなの許さない。それだけは絶対にイヤ」


どうしたらいいかなんて、もうわからない。
全然、わからない。

でも、寛を失うことだけは耐えられない。

私は寛に抱きついた。
頭を抱えるようにしがみつき、寛のこめかみに自分の頬を押し付けた。

寛のぬくもり、匂い。
死ぬほど苦しく、そして慕わしかった。
欲しくて欲しくて仕方がない。

この瞬間、私は自身の懊脳煩悶を忘れた。
正確には寛への愛着がすべてを凌駕した。
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