恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
たぶんまた青い顔をして歩いていた私に、越谷さんが言った。


「子どもじゃないんですから。それに、私たち、そういう関係じゃないんです。転勤くらいで騒ぎませんよ」


「僕には、上杉が大丈夫そうには見えないけどね」


「ひどいなぁ」


エレベーターに乗ると、越谷さんがポンポンと私の頭を優しく叩いた。


「いい加減、自分の気持ちに気付きなね」


意味深に言って、越谷さんは別な階で降りていった。



自分の気持ち?


寛を好きで、
でもあの頃の関係じゃないことに苦しんで、
これ以上何があるの?


コーヒーの深い黒を見つめ、私は胸を押さえた。



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