恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
寛が頭をかいて、それからにっと笑った。
人懐っこい寛の笑顔。
私が大好きな寛の笑顔。


「琴、ありがとう。俺、行くわ」


私は新たな涙で頬を濡らしながら頷いた。
何度も何度も。


「うん……うん、行ってらっしゃい。私はここで頑張る。ひとりでも、寛に依存しなくても立っていられる人間になる」


「俺も、次に会う時は、もうちょっと大人になっておく。
胸張っておまえにプロポーズできるくらいのさ」


私は泣き笑いの顔で言った。


「そんなの、受けられるかわかんないよ?」


「まあ、先の話だしな。いいよ、俺が日本に帰ってきて、それからもう一回考えようぜ。ただの同期としてやってくか。あらためて、恋愛できるか」


私たちは顔を見合わせ、笑い合った。
私は涙が止まらないままだったし、寛も困ったように笑っていた。
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