恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「あっそ。じゃ、いーよ」


ふてくされた口調になる寛。
今の私はその頬にキスすることもできる。

その腕に自分の腕を巻きつけ、頭をもたせかけることだってできる。

だけど、それはもう少し後にとっておこう。


「とりあえず、飲みに行こう。それから、考える」


「酔った勢いってのは勘弁な」


私たちは笑う。

友達のように恋人のように。
もうスタートは間違えない。


「そうだね、ロクなことにならないからね」


私たちの前にタクシーが一台停まる。
寛が私の手を引いて、後部座席に乗り込んだ。

今度繋いだ手は、しばらく解けそうもなかった。





<了>




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