恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
昨夜の寛の声が蘇る。

琴(こと)……と私を呼ぶ声。
哀願に近い、切ない声が言った。

そばにいてくれ、と。



……だからって、寝ちゃダメだろ。
親友と。

寛のことを何とも思わないと言えば、嘘になる。
だけど、私には、
私と寛の友情を壊してまで手に入れたい恋なんて存在しない。

それなのに、
なんてことだろう。
もう、これでおしまいじゃないか。

一度でも寝た男女が麗しく友情を保っていたとしたら、そんなのは欺瞞だ。
お笑い草だ。


「う……ん」


ベッドの上の寛が身動ぎした。
大きな身体が毛布の下で波打つ。

おしまいの時が来た。
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