恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「俺はまだ、おまえのことを友達だと思ってる。大事な存在だって思ってる。
琴にとっては、もうそうじゃないかもしれないけど」


寛の言葉は熱心だった。

寛は、完全に元の私たちに戻りたいと思っているのかもしれない。

共に仕事をし、友に飲み明かす親友に、戻りたいと思っているのかもしれない。


たぶん、そんなところにはもうたどり着けない。



「友達だよ……」



心と裏腹に、私の唇はそう呟いていた。


「あんたは大事な友達」



嘘つき。

私は自分を罵って、寛の手を振りほどいた。

背を向けるのは容易かった。
でも、私がマンションに入るまで、寛の視線は振り払えなかった。

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