ただ、君の隣にいたいだけ
「花菜ちゃん、久しぶりに二人でデートしない?」



練習時間は鬼と化す亮輔さん。恐ろしくて近づくこともできない。正直、私は本当にぬるま湯に浸かることしかしてこなかった人生だなと改めて実感する。


ここまで人に貶されて、暴言を吐かれるのは初めて。でも、やっぱり亮輔さんを好きな気持ちが勝っているから負けるもんかって奮い立たすことができるんだけれどね。


部屋をノックされ、ドアを開けるとそこに立っていた亮輔さん。突然の亮輔さんのお誘いに目を丸くする。ちゃんと話すのは五日ぶり。


練習と同時に亮輔さんはピタリと私に話しかけてこなくなった。もうそれは避けていると言わんばかりに。それだけリーダーとしての責任感を感じているんだろうから私からも安易に声を掛けることはなかった。


正直、寂しくなかったと言えば嘘になる。好きな人になんとなく避けられているのはあまり気分がいいものじゃないもん。



「は、話しても大丈夫なんですか?」



だからそんな距離感のあった亮輔さんからいきなり普通にデートに誘われるなんて予想外も予想外。


とっさに聞き返す言葉は間抜けな発言。すると亮輔さんは少し気まずそうな表情を浮かべた。
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