ただ、君の隣にいたいだけ
「かなーたのしいな、オレ、かなとおにいといっしょにじてんしゃうれしい」



可愛い、なんて可愛いの明海。そう思っていたらあっと言う間に抜かされた。私が抜こうと思っていたのに。チラッと後ろを振り返り、ニヤリと笑う彼。


あー悔しい。ペダルを力を込めて漕ぐ。抜かす、抜かす。どんどんと距離が縮まってきた。



「明海ーお先!!」



抜いてやった。はあ、それにしても久しぶりに全速力で自転車を漕いだ気がする。かなり疲れた。でも爽快。そう思っていたら一瞬で抜かされた。


結局、交代するなんて言ってたけど代わることなく抜かす、抜かされるで林原海岸まで向かっていた。


「ついたー!!」



「花菜ちゃん、おつかれさま。頑張ったね」



「べ、別に、疲れてませんから」



意地を張ったのに息切れはお見通しだった。なんで彼は息切れしてないんだろう。自転車を停めて彼は慣れた手つきで明海を下ろす。


あっちでシャボン玉したいと明海は彼の手を掴んだ。なんだ、私よりこの人ですか。


靴の中が砂だらけ。それでも明海も亮輔さんもどんどんと波に近づいていく。寄せて返す波に明海はきゃっきゃっ楽しそう。


あの人は子どもとの接し方をちゃんと分かってるんだ。
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