ただ、君の隣にいたいだけ
「花菜ちゃん、どうした?食欲ないの?」

「な、何でもないですよ」



亮輔さんとまた一つ屋根の下。私の異変なんてすぐに気づかれるに決まってる。でも、このことは言えない。


もし、子どもが出来てたら亮輔さんの足を引っ張ることになる。きっと、亮輔さんは責任を感じて夢を諦めてしまう。



そんなことはさせたくない。グルグルと毎日そんなことを考えて気がつくと亮輔さんを避けるような態度を取るようになっていた。



そして今日、生理が来なくて一週間が過ぎた。もう、これ以上有耶無耶には出来ない。覚悟を決めた。お母さんと亮輔さんには地元の友達に会うからと嘘を吐いて青池から離れた場所で検査薬を買う。



不安になると時々、ペンダントに触れて気持ちを落ち着かせる。連絡が来て嘘を吐ける自信もないからあえて携帯は見ない。



どうしよう?もし、妊娠してたら。自分の視線がどうしてもお腹にいってしまう。ここに亮輔さんとの子どもがいるかもしれないんだ。


お腹にそっと触れてみる。動くわけないのになんだかたまらなくドキドキした。でもそんな自分を誰かに見られたら大変だからとすぐに手を離した。



私が検査薬を買うために下りた駅は高校の最寄り駅。特別大きな駅ではないし身内にバレることはまずないはず。それでも一応周囲を警戒し、一目散にドラックストアに向かった。
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