ただ、君の隣にいたいだけ
「さっきの話の続きだけどさ、俺はその人と出会ってからスーツアクターのバイトばかりするようになったんだ。正直、『カッコいい』って言葉は自慢じゃないけれど耳にタコが出来るくらい言われてたけどさ、『カッコいい』って言われたくて仕方なかった。もちろん、それはスーツアクターとして。それが一番の転機かな。それからは女の子と遊ぶくらいならもっとヒーローに近づきたくて研究したり、バイトに精を出すことのほうが楽しかったから。俺、スーツアクターのことは本当に好きだし、俺の仕事だって胸を張って自信を持って言える。天職だって思ってる。だから、花菜ちゃんにも興味を持ってもらいたいんだ」



「・・・どうして?どうして私に好かれたいとか、スーツアクターに興味を持って欲しいとか思うんですか?」



「それはね、あっヤバイ。もうこんな時間だ。急がなきゃ、つい長居しちゃったね。デートの場所、時間が決まってるんだよ」



思わず目を瞑って次の言葉を期待したのにまたパッと手を握られる。そのまま引っ張られ、立ち上がらされたと思ったらまた急ぎ足。腕を掴まれたままだから私は着いて行くのに必死。


でも、お弁当を食べるときに離された手、ちょっと寂しかったからまた掴まれて嬉しいな。



「り、亮輔さん。デートってどこに行くんですか?」



「ん?歌舞伎だよ」
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