ただ、君の隣にいたいだけ
ファミリーパーク前の駅に着いたのは23時。お母さんには亮輔さんの実家で晩御飯をご馳走になってくるって言ってある。


ここもそんなに明るくなくて街灯がポツリポツリあるくらい。人気もほとんどない。歩調は合わせてくれるけれどやっぱり手も繋がない。会話もなくなっちゃった。



「あっ、私ここで亮輔さん見かけたんです。戻ってきた初日。バク転してましたよね?ダンサーさんかなって思って見てたんですけど軽い身のこなしに目を奪われたんです」



気がつくと公園のところまで来ていた。思い出したように話す私に少し前を歩いていた亮輔さんはパッと振り返って歩み寄ってきた。


どうしたんだろう。
どうしてそんな真剣な表情をしているの?



「・・・えっ?」




グッと右手を掴まれ引き寄せられた。目は大きく見開いたまま突然重なった唇。




ほんの一瞬掠める程度のキスをした亮輔さんはただ一言、『ごめん』と言って私を強く抱き寄せた。
< 82 / 231 >

この作品をシェア

pagetop