あなたを愛する者
「もう杏てば、髪ボサボサー」
ミカが私の髪を直す。
「あ、ありがと」
急いで走って来て、髪も服も乱れている。
今日みんなで会うことは、わかっていた。
本当は髪も服もしっかり整えてくるのが常識なんだろう。
こういうところ私は鈍感なのかもしれない……。
それどころか約束を忘れていた……なんて、話にもならない。
「杏ちゃん、こいつ同じ3年の、入江千明」
一呼吸置いたと同時に、リク先輩が話しだした。
「こんにちは」
紹介された入江先輩が、にこっと微笑む。
「こんにち……わ」
まともに見るのは初めてだ。
確かに、ハーフっぽい整った顔は、かなりのイケメンだ。
やわらかそうな栗色の、ちょっと長めの髪がよく似合っている。
よくテレビに出てる俳優さんに似ている。
この人が本当に、私なんかに興味があるの?
すごくモテそうだけど……。
何かの間違いなんじゃないかと思ってしまう。