オトナになるまで待たないで
着いた場所は、美容室ではなく「美容専門学校」だった。

佐野さんという男性を紹介された。


「今日は友だちを連れて来ました」

「珍しい!ビアンの子ぉ?」

「ビアンどころか、オンナにも目覚めてないんですぅ」

「ヤッダー。ありがちぃ」


そりゃそうだよな。

ゴウの友達は、そっちの友達だよな…



佐野さんが言う。


「一体、どうしちゃったのよ?」

「自分で切ったんです」

「じゃなくて、その腕よ。ロクにシャワーも浴びれないでしょ。可哀想に」


ああ。

腕の心配を先にしてくれる人が、ここにいた。



「ミツキちゃん、この子やってあげて」

「はーい」


ミツキちゃんと呼ばれた生徒さんが、シャンプー台に案内してくれる。


「トリートメントもやってあげて」

佐野さんが指示を出す。


「どうしましょうか?」

「サイド入れちゃった方がいいと思うんだよね。乾かしやすいでしょ?」

「ですね」


みんな勉強してる。

ここにいる人は、真剣で、嫌々やっている人なんて誰もいない。
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