オトナになるまで待たないで

「前は京都にいたの?」

ゴウは首を振る。

「京都はお母はんの実家があんねん。

ウチとこは転勤族でな、生まれたんは東京やし、仙台にもおってんで」

「へぇ。私なんか千葉から動いたことがない」


「ええもんちゃうよ。

一年で2回引っ越したこともあったなぁ」


想像もつかない。

私が引っ越したのは、小学校の時だけ。

引っ越したと言っても2つの市を越えただけだ。


「イジメられたりしなかった?」

「多少な。せやけど、空手やっとるから」

ゴウは少し恥入る様子をした。

「そんな細いのに、空手もできんの?」

「父親から教わってん。『豪太』やで?何を期待してるんか分かるやろ」

「いつ女子だって、親は分かったの?」

ゴウはレンゲを止めた。

「これは今話しとく。

朝、お父はんに話しとかなあかんて言われてん」


私も手を止めた。

「何を?」

ゴウはためらうように、目線を下げた。
沈黙が続いたが、やがてゴウは口を開いた。


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