オトナになるまで待たないで

「よう。いつもパンばっかしだなあ」


突然、声をかけられて現実に引き戻された。

原さんというお爺さんだ。


「はぁ。安いので」

原さんはプラスチック容器を出すと、私の前にそれを押し出してきた。


「これ何ですか?」

「食べねえぃ。家で採れたシソだ」

「あ…どうも」


容器を開けると、これでもかってくらい、シソが詰まっていた。


シソって、ちょっと食べるもんだと思ってた…。


「いただきます」

「おう。全部食っちまったっていんだ。いっくらでも家にあんだから」


食べた瞬間、シソの香りで脳がスッキリした。


「美味しい!」

「青い物も食わねぇと体おかしくするぜ」

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