オトナになるまで待たないで

変な臭い…

店内が、なんとなく白い。


「佐々木さん!」



佐々木さんがいつも使っているブースを開けた。

佐々木さんは、机にうつ伏せになって、いびきをかいていた。


「佐々木さん!」

肩を揺する。


「佐々木さん!火事!逃げよう!」


佐々木さんは、うつ伏せのまま言った。

「君だけで逃げろよ」

「そうはいかないの!佐々木さんが逃げないと、私も逃げれない!」

「いいんだ…俺は。
火事で死ぬ運命なんだ…

家も母ちゃんも燃やしちまったんだから…」


だからだ。


だから、いつも灰皿に水を入れてたんだ。
< 393 / 472 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop