オトナになるまで待たないで
なるほど、これはかっこいいわ。


強い目力、

黒い髪、

辛辣そうな唇、

骨を感じさせる肩。


ただ背筋が、ぞっとする。


底なし沼みたいだ。

暗くて、重い。



なぜ、こんなに冷たい目で私を見るんだろう?

私、何かした?


なのに目が離せない。

その奥に何かがある。


不意に、その正体が見えた。


信じられない。

日の射さない牢獄に、花が揺れているのを見つけた気持ちだ。


「本当に…本気で心配してるんですね…」


店長が視線を外した。

それどころか、あからさまに顔を背けた。


7階に到着して、ドアが開く。

動く様子がないので、先に降りる。
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