冷酷な彼は孤独な獣医
でも確かに、彼女が病院を辞める前の日に此処に連れて来られた犬の傷は酷かった。


お腹の部分に楕円形の大きな傷があり、皮膚が欠損していた。



龍はその痛々しいお腹を生理食塩水で洗浄すると、

突然傷の表面を器具で傷付け始めた。


彼女は目を覆い、あたしはとっさに大きな声を出した。


「なにしてるの!」




それは新鮮な肉芽形成を促す為に必要な事らしく………


でも、あれはもう二度と見たくない。




彼女が辞めてからは毎日が過酷で、

あたしの体は疲れ切っていた。


そしてようやく今日は休診日。
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