短編集‥*.°


今頃、みんな、国語の担任と向き合ってるんだろうな。

形が次々に変わっていく雲を眺めながら、教室の風景を思い浮かべた。


国語科の担任の、黒縁メガネ。騒がしい組と静か組、二つに分かれた教室。緑がベースの、国語の教科書の表紙。チョークが黒板に当たる音。


…ここには、空以外、何もない。

目に映る雲は、不思議な形をしていた。


あの雲は…なんの形だろう?そんなどうでも良いことに思考を深める。
…ウサギ?馬?

最近、勉強や悩みに追われて、こんなことに頭を使うのは久しぶりな気がする。…どこか、心地良い。


ふと、おかしな考えが頭をよぎる。



──あの雲は、自分自身は何の形だと
思っているんだろう。



…そんなことを考える時点でバカげてるってのは、わかってる。所詮は雲という事に変わりはないし、生き物じゃない。

それは、わかってる。


…でも、なぜか、引っかかった。



あの雲。私にはウサギに見えるけれど、
本当はなんなんだろう。



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