短編集‥*.°


なんで白いワンピースなんて着てるの…全く身に覚えがない。


そもそも、部屋に入った直後に私は誘拐されたのだから、着替える暇なんてないはず。


…なら…誰かに、着替えさせられた…!?


…ゾクリと鳥肌が立った…。


私の身体を、誰かが見たの…?


ヤダ…怖い…怖いよ…。


…レイ…助けてよ…!


ここに居るはずも聞こえるはずもない彼氏の名を、心の中で呼んだ。


レイ…レイ…!


ガシャガシャと鳴る手錠の音…私が暴れるから、その度に手錠は揺れる。


誰なの…私をここに繋げてるのは…。



恐怖だけが身体を支配してる…。


レイ…助けて…助けてよ…レイ…。


…ザーと音は、上から降り注ぐ…。


…雨なんだと、どうでもいい情報だけを理解した…その時。


ガチャと、暗い部屋の中に…扉が開く音が響いた。


…扉なんてあったんだ…いや、それより…この部屋に誰かが入り込んだ、気配がした。


…雨の光の中に…何者かのシルエットが一瞬 浮かんで消えた。


…誰なの!?


怖くても、手錠は決して外れてはくれず、目をつぶるしかない。


不意に誰かの手が、私の足に触れた。


…気を失う寸前。


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