願い事叶えます



晴美は大学へ向かった


もしかしたら彼に出会えるのではないかと少し期待しながら



彼は最近彼女と別れたらしい



だったら自分にもチャンスはあるはずだ




残念ながら晴美は憧れの彼に会うことはなかったがそれでもめげなかった






晴美は木の下の長椅子に腰掛け、読書をしようとした


そしてふと木が傷ついているのに気付いた



何か刻んである



晴美はその刻んであるものを見てみた




それは


ただの星のマーク



「…なんだ落書きならもっと面白いもの描きなさいよ…ってあら?」



よく見れば星のマークの近くには文字も書いてあった




『願い事を3回唱えてね』




「あら!願いが叶う木かしら」



微笑みながらその刻んである文字を見て、晴美は面白半分で心の中で願い事を唱えた





ー憧れの彼と結ばれますように…











「なんちゃって」



苦笑しながら晴美は鞄の中から本を取り出した



その時だった



「あなたの願い事受けとりました」




頭上から声が降ってきて晴美は顔を上げた




晴美の目の前には箒に乗ったトンガリ帽子を被った少女がいた




「え…?」



戸惑いを隠せない晴美は激しく瞬いた



「こんにちは…鈴宮晴美さん?

あなたの願い事私が叶えて差し上げましょう」



「ま、魔…女…?」


「大正解です」



「まさか」



「おっと私は本物の魔女ですよ?

あなたにはどうしても叶えたい願い事があるのでしょう?

憧れの彼と結ばれたいのでしょう?」



「どうして…それを…!」


晴美は頬を赤く染めながら俯いた



もしかして知らず知らずのうちにさっき声に出していたのだろうか



いや、しかし目の前にいる彼女は本当に箒に乗って浮かんでいる



もしかしてもしかして本当に魔女…?



「叶えてくれるの…?わたしのお願い…」


「ええ、もちろん。…あ、報酬は頂きますけど」


「報酬!?」


「そうですねえ、では…それを」



彼女は晴美が持っている本を指差した



この本は友人に勧められ買った本だった



タイトルは



『常識に捕らわれない生き方をする』





本が報酬でいいのだろうか



いやいいと言っているのだからこの際叶えてもらおう



晴美は本を彼女に差し出した



「報酬は最後でいいですよ。

あと注意事項なのですが…」


「注意事項?」


「ええ。恋愛の願い事に関してはひとつ知っていてほしいことがあるのです」



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