彼とほんとの私
重い口を開いたのは、父だった。


「…隠していても、もう愛実は気づいているんだね。愛実は私たちの子どもじゃない。しかし…」

「嘘よ!そんなことないって言ってよ!!」


「愛実…」


母が今にも泣きそうな声で言う。父もさっきとうって変わり、険しい表情だ。


「…ひとりにして」


「えっ…」


「お願い!ひとりにして!!」


4人部屋の病室に私の声が響きわたった。動揺のせいか声が大きくなる。


「愛実、傷にひびくわ…」


母の言葉を遮り、続けて言う。


「信じてたのに!ほんとの私は、私は誰なの!?」


「斎藤さん!ここは病室なの静かにして」


病室の入り口の側で看護師の声がした。


「愛実、心配ないよ。今日はこれで帰るから、また落ち着いたら、話そう」


そう言うと、父は母を促して帰ろうとした。母はまだ、何か言いたげだったが、父に従って帰っていった。







「声が廊下まで筒抜けだよ」


開きっぱなしの病室の戸に、ひとりの男が立っていた。


「…倉田先生……!?」


「いいや、違う」
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