彼とほんとの私
智史は、必要以上に近づいた距離をとがめるように、私と大柴を代わるがわる見る。


「智史、そんな目で俺たちを見るなよ。何も悪いことしてないよ。ね、斉藤さん」


大柴が、降参といったように両手を軽く上げてみせる。


「そう、そうだよ。それよりこの料理、美味しいね。どこのお店の料理?」


「…それは、近くのオーガニック食品を扱うお店に併設しているレストランから頼んだんだよ」


智史は、まだ気に入らないって様子でぶっきらぼうに話す。


それを見ていると、智史は大柴に比べて幼く、大柴は余裕のある大人に感じる。


「納得。だから、美味しいんだ。私も愛美も、昔からオーガニック料理好きだったもんね。高校時代、映画観た後よく食べたのよね」


と、結衣が言ったのに、大柴が、


「へえ、そうなんだ。俺も高校の時よく映画観たよ。それってどんな映画?」


と、返す。


聞くと、私と結衣が観にいった映画と同じものを大柴も観ていた。3人で映画の話をする。


それから、趣味の話になり、大柴はテニスが趣味だと分かる。テニス部だった私と話が合い、ついつい話し込んでしまった。


大柴の話は、ユーモアがあり、ワインも入っていたせいか、私は悩み事を忘れて久々に声を出して笑った。


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