彼とほんとの私
私たちは、はっとして大柴を見る。


「なんだか、中井さんが気分悪そうなんだ。だから、お水もらえる？それに、俺の名前も出てたみたいだし、何かあったの？」


「大柴先輩が気にするようなことは、何もないですよ。それより、水持って行きますね」


智史は苦笑いしながら言い、コップに水を入れると、リビングの方へ歩いていく。


私も結衣が心配だったので、智史の後に続こうとした。しかし、大柴に肩を掴まれて、


「斉藤さん、後で話聞かせてくれるよね？」


と、小声で言われる。


私は少し迷ったが、大柴が肩を離してくれないので、仕方なく頷く。


大柴は満足そうに笑うと、私の肩をポンポンと叩いてリビングへ歩いていく。


少し遅れて、私もリビングへ歩いていった。






結衣は、ワインを飲み過ぎたみたいだった。


「愛美ごめん。気分が悪いから、少し休んだら帰るね」


結衣が言うと、


「じゃあ、俺が送るよ」

と、大柴が申し出る。


「そんな悪いですよ」


「いや、俺も帰ろうかと思っていたところなんだ。智史、タクシー呼んでくれないか」


結局、結衣は大柴に送ってもらうことになった。

智史がタクシーを呼ぶ電話をしてる時に、大柴が連絡先を書いた名刺を渡してきた。


「さっきの話は、後日聞くから連絡してよ」


「分かったわ」


私はそう言って名刺を受け取った。


< 54 / 64 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop